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ノロウイルスによる感染性胃腸炎

 

 

 感染性胃腸炎とは、細菌、ウイルス、寄生虫などによって引き起こされる胃腸炎のことです。このうちウイルス性の感染性胃腸炎には、ノロウイルス(SRSV)、ロタウイルスによるものが多く、ほかにアデノウイルス、アストロウイルス、サポウイルスなどによるものがあります。

  (感染症発生動向調査における感染性胃腸炎の届出基準はこちら

 最近、全国的にノロウイルスによると考えられる集団感染事例が多く報告されています。ノロウイルスは人から人へ感染する場合と、食品から感染する場合があります。また、感染力が強く、少量のウイルスでも感染しますので、学校・保育園・福祉施設などの集団生活の場では、集団感染を引き起こしやすいといわれており注意が必要です。

 広島市における感染性胃腸炎の集団発生事例

 

■ノロウイルスとは

 ウイルスの中でも比較的小型のウイルスで、従来小型球形ウイルス(SRSV)またはノーウォーク様ウイルスと呼ばれていました。

 ノロウイルスは胃酸の中でも生き延び、アルコールや逆性石けん(塩化ベンザルコニウム等)などの薬剤にも抵抗力があります。また、他のウイルスと比べて、環境中や食品中で比較的長く存在することができますが、増殖することはありません。増殖するのは人間の腸管の中のみです。

 ノロウイルスの感染力は非常に強く、わずか10〜100個のウイルスでも感染することがあるといわれています。

 このようなノロウイルスの薬剤や環境中での抵抗力の強さ、人への感染力の強さに加え、感染経路の多様性が、予防対策を困難なものにしています。

 

ノロウイルスの電子顕微鏡写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノロウイルスの電子顕微鏡写真

 ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、以前は「お腹の風邪」、「お腹のインフルエンザ」などと言われたこともありましたが、比較的最近になってから、その原因の多くがノロウイルスであることがわかってきました。

 ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、晩秋から冬季にかけて多くなりますが、それ以外の季節でもみられます。

■症状

 潜伏期間は1〜2日で、下痢と嘔吐が主な症状で、そのほか、発熱、吐き気、腹痛、頭痛などの症状がみられます。

 発熱はあまり高くならないことが一般的です(38℃以下)。

 また、小児では嘔吐が多く、成人では下痢が多いことも特徴の一つです。

 一般的には数日で軽快し、後遺症もありませんが、免疫力が弱い乳幼児や高齢者は、脱水症状を起こして重症化する場合がありますので注意が必要です。

 また、特に高齢者の場合は合併症や体力の低下などから症状が悪化したり、嘔吐物がのどに詰まったために、窒息したり肺炎などの二次感染を起こす場合がありますので、慎重な経過観察が必要です。

 

■治療法

 現在、ウイルスの増殖を抑える薬はありませんので、整腸剤や点滴による電解質補給など対症療法しかありません。

 なお、下痢や嘔吐がひどい場合、脱水症状を起こす場合がありますので、水分補給につとめるとともに、早めに医療機関を受診してください。(特に乳幼児や高齢者)

 

■感染経路

 感染経路は、基本的にはノロウイルスが口から入り、消化器に達して主に腸管で増殖して感染します。ノロウイルスが口に達する経路は様々で、具体的な経路を下に示しました。

 感染性胃腸炎の原因となる病原体の中でも、ノロウイルスは他の病原体と異なり、経口感染や接触感染のみならず、飛沫感染や空気感染を起こすことが最近になってわかってきました。

 これらの感染経路を理解することが、予防する上で大切です。

1 経口感染(食中毒)

ウイルスに汚染された食品(二枚貝に含まれていることがあります。)を、生または十分に加熱しないで食べた場合。

感染した人が調理して食品や水が汚染され、それを食べたり飲んだりした場合。

 

2 接触感染

感染した人の便や吐物にふれ、手指をとおして口から入った場合。

感染した人の手指や感染した人が触れた衣服、器具等に接触し、手指をとおして口から入った場合。

 

3 飛沫感染

患者の便や吐物が飛び散り、その飛沫(ノロウイルスを含んだ小さな水滴。1〜2m飛散します。)を吸い込んだ場合。

便や吐物を不用意に始末したときに発生した飛沫を吸い込んだ場合。

 

4 空気感染

患者の便や吐物の処理が不十分なため、それらが乾燥して飛沫よりもさらに細かい粒子となって空気中を漂い、それを吸い込んだ場合。この場合感染源からかなり離れた場所でも、感染する可能性があります。

 

 ■予防方法

1 手洗い・うがいの励行

 最も基本的なことは、手洗い、うがいの励行です。(特にトイレの後、便や吐物を処理した後、調理の前、食事の前など) 手洗いは石けんを使用し、しっかりと流水で洗い流してください。(※1、※2参照)

 

2 食品の十分な加熱

 ウイルスは熱を加えると死滅するので、ウイルスが含まれている可能性のある食品は、中心部までよく加熱してください。(※3参照)

 

3 消毒

 ノロウイルスに対しては、熱湯(※3)または、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒(※4)が有効です。

  • 調理器具の消毒が大切です。まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は熱湯による消毒が有効です。

  • ウイルスが付着した衣服や器具、施設なども消毒する必要があります。

4 患者の便、吐物の処理

 患者の便、吐物には多量のウイルスが含まれていますので、取扱いには十分注意してください。

  • 床などにある便や吐物を処理する時は、樹脂製(ビニールなど)の手袋を使用し、マスクやエプロンを着用してください。また、処理する時は、換気を十分に行ってください。

  • 便や吐物は、使い捨てのペーパータオル等で、外側から内側に向けて、ふき取り面を折りたたみながら静かにふき取ります。

  • ふき取った便や吐物は、ウイルスが飛散しないようにビニール袋等に入れて、口をしっかりと縛って密封し廃棄してください。この時、ビニール袋には、あらかじめ廃棄物が十分に浸る程度に1000ppm(0.1%)次亜塩素酸ナトリウム(※4参照)を入れておきます。

  • 便や吐物を処理した後の床などは、1000ppm(0.1%)次亜塩素酸ナトリウム(※4参照)をしみこませたペーパータオルで覆い、30分程度放置した後、水で濡らしたペーパータオル等でよくふき取ってください。これらの使用後の廃棄物も、ビニール袋等に入れて、口をしっかりと縛って密封し廃棄してください。

  • 便や吐物で汚れた衣服や器具などは、ウイルスが飛散しないようにフタ付バケツ等に入れて持ち運び、500ppm(0.05%)次亜塩素酸ナトリウム消毒剤(※4参照)に浸け置きした後、よく洗濯・洗浄してください。

  • ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、吐物や便は速やかに処理し乾燥させないことが重要です

  • 処理した後の手洗いとうがいは、特に念入りに行ってください。

  • 嘔吐した場合は、口の中をよくすすいでください。せきやくしゃみなどにより飛沫が発生し、ほかの人に感染させるおそれがあります。また、使った流し(水槽内)や水栓をよく掃除してください。

5 その他

  • 症状がある間は、食品の調理をできるだけ控えてください。やむをえず調理する場合は素手で食品を触らずに、手袋や箸を使用し、洗浄後乾燥させた調理器具を使用してください。また、症状がなくなっても比較的長期間ウイルスが排出される場合がありますので、食品を調理される方は、十分に注意する必要があります。

  • 下痢や嘔吐の症状がある場合は、できるだけ学校や仕事を休み、体力の回復に努めてください。


【参考】

(※1)石けん自体にはノロウイルスを直接死滅させる効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指からはがれやすくする効果があります。手のひらだけでなく、指の間や指先、爪の間もしっかりと洗います。手拭用のタオルは共用しません。

 正しい手の洗い方(感染予防のために手を洗いましょう)

(※2)ノロウイルスには、エタノールや逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム=オスバン、ウエルパス等の主成分)はあまり効果がありません。

(※3)85度以上で1分間以上の加熱を行えば、ノロウイルスは死滅するとされています。

(※4)ノロウイルスに対しては次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効です。ただし、皮膚に対する刺激作用がありますので手洗いには使用できません。また、腐食するため原則金属には使えません。次亜塩素酸ナトリウムは消毒する対象に応じて、適切な濃度に希釈して(薄めて)使います。消毒液の作り方(薄め方)と使用上の注意事項については、次を参考にしてください。

 消毒液の作り方と使用上の注意(当サイト)

 

【参考にした資料】

感染症の話〜ノロウイルス感染症(国立感染症研究所)

ノロウイルス感染症とその対応・予防 (医療従事者・施設スタッフ用)(国立感染症研究所)

ノロウイルスの感染経路(国立感染症研究所)

ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省)

 

 


■広島市における感染性胃腸炎の流行状況

(1999/00シーズン〜2007/08シーズン集計)

2009年2月更新

 

 感染性胃腸炎は、年間をとおして患者がみられますが、特に冬季に患者が増加します。冬季を中心とした1年間(7月から翌年の6月まで)を1シーズンとして最近数年間のデータを集計し、その結果をグラフにして示しました。
  • 1シーズンの中でピークは、12月と2月〜3月の2回認められ、それぞれノロウイルスとロタウイルスに起因していると考えられる。
  • 年間報告数は増加傾向にあるが、特に7月〜10月にかけての非流行期の報告数が増加している。

【図1】月別報告数の推移

【図2】シーズン別報告数の推移

【図3】流行期と非流行期の比率

【図4】感染性胃腸炎の患者から検出されたウイルスの種類別割合

【図5】感染性胃腸炎の患者から検出されたノロウイルスとロタウイルスの月別検出数

【参考】数値データ

 

 

【図1】月別報告数の推移
【図1】月別報告数の推移
 図1は、月別定点当り報告数(1週当り平均)の推移を示したグラフです。

  7月から10月ごろまでは1年間の中では最も少ない時期ですが、11月ごろから急激に増加し、12月に一度ピークを迎えます。翌年の1月にやや減少しますが、再び増加傾向となり、2月から3月にかけてゆるやかなピークを迎え、その後夏季にかけて減少傾向で推移します。

 

 

【図2】シーズン別報告数の推移
【図2】シーズン別報告数の推移
 図2は、シーズン別報告数の推移を示したグラフで、シーズン全体の報告数に加え、報告数の多い12月〜3月を流行期、報告数の少ない7月〜10月を非流行期とし、その定点当り報告数を示しました(いずれも1週当り平均)。

  特に非流行期が増加傾向にあり、2001/02シーズンまでは定点当り2人以下でしたが、2004/05シーズン以降は定点当り4人程度まで増加し、1999/00シーズンの倍以上になっています。

 なお、2006/07シーズンの非流行期は定点当り5人を超えています。これは例年より1〜2ヶ月も早い9月下旬ころから流行が始まったため、非流行期に分類している10月の報告数がかなり多かったことが影響しています。(参考:広島市における2006年9月から12月の感染性胃腸炎の動向

 

 

【図3】流行期と非流行期の比率
【図3】流行期と非流行期の比率
 図3は、図2で示された定点当り報告数の流行期と非流行期の比率の推移を示したグラフです。

  期間の前半に5〜7程度であった比率は減少傾向で推移して、2004/05シーズン以降は4以下になっています。

  このことから、感染性胃腸炎は患者数の季節変動が少なくなる傾向にあり、今後の長期的な動向に注目する必要があります。

 

 

【図4】感染性胃腸炎の患者から検出されたウイルスの種類別割合
【図4】感染性胃腸炎の患者から検出されたウイルスの種類別割合  図4は、感染性胃腸炎の患者から検出されたウイルスの種類別割合を示したグラフです。

 集計対象期間中に、354人の感染性胃腸炎の患者からウイルスが検出され、このうちノロウイルス(SRSV)は166人(47%)から、ロタウイルスは79人(22%)から検出されています。

 ほかには、アデノウイルスが50人(14%)から、エンテロウイルスが49人(14%)から検出されています。

 

 

【図5】感染性胃腸炎の患者から検出されたノロウイルスとロタウイルスの月別検出数
【図5】感染性胃腸炎の患者から検出されたノロウイルスとロタウイルスの月別検出数
 一般的に、冬季の感染性胃腸炎の原因はウイルス性のものが多く、特にノロウイルス(SRSV)とロタウイルスが主な原因ウイルスとされています。

 図5は、感染性胃腸炎の患者から検出されたノロウイルスとロタウイルスの月別検出数を示したグラフです。ノロウイルスとロタウイルスの月別検出数の推移を比較すると、ノロウイルスのピークが11月〜12月であるのに対して、ロタウイルスのピークは3月にあります。このことは、感染性胃腸炎の月別定点当り報告数の推移を示した図1で、患者のピークが12月と2月〜3月の2回認められる要因であると考えられます。

 

 

【参考】数値データ

月別定点当り報告数の推移(1週当り平均)  図1  図2  図3 関連データ
シーズン 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 シ−ズン
全体
非流行期
(7-10月)
流行期
(12-3月)
流行期/
非流行期
99/00 2.33 1.41 1.25 2.11 7.59 9.92 4.78 8.87 13.42 9.03 6.79 4.28 5.98 1.78 9.25 5.21
00/01 2.06 1.51 1.59 1.84 3.51 13.57 10.91 14.61 8.96 3.69 3.45 2.81 5.71 1.75 12.01 6.86
01/02 1.75 1.63 1.62 2.54 4.53 13.73 11.72 12.68 10.52 6.38 3.49 2.93 6.13 1.89 12.16 6.45
02/03 3.23 2.14 2.13 3.79 16.13 13.21 8.44 15.98 16.75 8.92 4.66 3.67 8.25 2.82 13.60 4.82
03/04 2.67 2.46 2.93 2.97 7.01 25.15 12.05 10.56 15.21 13.62 8.51 7.07 9.18 2.76 15.74 5.71
04/05 4.10 3.40 3.89 3.96 7.26 14.41 18.83 11.81 9.88 7.00 5.55 5.02 7.93 3.84 13.73 3.58
05/06 4.11 3.59 3.70 3.54 4.82 15.14 14.57 14.76 14.83 9.59 6.69 5.60 8.41 3.74 14.83 3.97
06/07 4.35 3.69 4.74 11.33 19.48 16.26 7.96 9.76 8.32 7.33 5.86 4.90 8.67 6.03 10.58 1.75
07/08 3.46 3.66 3.86 5.05 9.82 18.56 14.12 14.69 14.36 8.45 6.25 4.82 8.92 4.00 15.43 3.85
平均 3.12 2.61 2.86 4.13 8.91 15.55 11.49 12.64 12.47 8.22 5.69 4.57 7.69 3.18 13.04 4.69
 
感染性胃腸炎の患者から検出されたウイルス  図4  図5 関連データ
種類 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 合計
ノロウイルス 0 3 6 17 43 37 24 20 7 5 2 2 166
ロタウイルス 1 1 1 0 0 0 2 18 28 16 12 0 79
アデノウイルス 4 3 5 3 3 9 2 7 3 7 2 2 50
エンテロウイルス 14 5 4 5 8 7 1 2 1 0 1 1 49
その他のウイルス 0 0 0 0 0 0 4 0 0 2 3 1 10
19 12 16 25 54 53 33 47 39 30 20 6 354

 

 


■関連情報

 ◆ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省)

 ◆ノロウイルス食中毒対策について(厚生労働省)

 ◆高齢者介護施設における感染対策マニュアル(厚生労働省)

 ◆ノロウイルス感染症(国立感染症研究所)

 感染症の話〜ノロウイルス感染症(国立感染症研究所)

 ◆感染症の話〜感染性胃腸炎(国立感染症研究所)

 ノロウイルスによる感染性胃腸炎について(広島県感染症情報センター)

 感染性胃腸炎について(広島県感染症情報センター)

 社会福祉施設におけるノロウイルス対応標準マニュアル(東京都福祉保健局)

 ウイルスの殺菌・滅菌(不活化)に関するデータ集(ノロウイルス)(当サイト)

 広島市における2006年9月から12月の感染性胃腸炎の動向(当サイト)

 ノロウイルス −最近の流行について−(当サイト)

 いろいろな食中毒/ノロウイルス(広島市食品保健課)

 

 


−お問い合わせ−

広島市衛生研究所

電話082-277-6575

FAX082-277-0410

メール送信ei-seikatsu@city.hiroshima.jp

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